令和6年度 福西会 病院情報の公表

病院指標

  1. 年齢階級別退院患者数
  2. 診断群分類別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)
  3. 初発の5大癌のUICC病期分類別並びに再発患者数
  4. 成人市中肺炎の重症度別患者数等
  5. 脳梗塞の患者数等
  6. 診療科別主要手術別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)
  7. その他(DIC、敗血症、その他の真菌症および手術・術後の合併症の発生率)

医療の質指標

  1. リスクレベルが「中」以上の手術を施行した患者の肺血栓塞栓症の予防対策の実施率
  2. 血液培養2セット実施率
  3. 広域スペクトル抗菌薬使用時の細菌培養実施率
  4. 転倒・転落発生率
  5. 転倒転落によるインシデント影響度分類レベル3b以上の発生率
  6. 手術開始前1時間以内の予防的抗菌薬投与率
  7. d2(真皮までの損傷)以上の褥瘡発生率
  8. 65歳以上の患者の入院早期の栄養アセスメント実施割合
  9. 身体的拘束の実施率
年齢階級別退院患者数ファイルをダウンロード
年齢区分 0~ 10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~ 70~ 80~ 90~
患者数 0 47 112 117 182 224 356 923 1147 595
 当院で令和6年6月1日~令和7年5月31日までに退院された患者さんの数は3,703人でした。
 うち、70歳以上の患者さんが全体の72%を占めており、半数以上がご高齢の患者さんとなっています。
当院の位置する福岡市早良区は、福岡市7区の中で面積が一番広く、北から東方面は都心寄りで、南西部は佐賀県境の山地のふもとに当たり、のどかな田園風景が広がります。当院は同区のほぼ中心にあり、比較的高齢者の方が多い地域に当たるためと考えます。
診断群分類別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)ファイルをダウンロード
内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
0400802499x0xx 肺炎等(市中肺炎かつ75歳以上)手術なし 手術・処置等2なし 18 16.67 16.40 0.00% 83.83
110310xx99xxxx 腎臓又は尿路の感染症 手術なし 18 16.56 13.66 22.22% 79.28
040081xx99x0xx 誤嚥性肺炎 手術なし 手術・処置等2なし 14 18.14 20.78 35.71% 84.50
050130xx9900x0 心不全 手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし他の病院・診療所の病棟からの転院以外 - - - - -
100380xxxxxxxx 体液量減少症 - - - - -
 当科では、内科疾患に幅広く対応しています。症例数はそれほど多くありませんが、基本的に早期退院を目標としています。
 当科で扱っている上位5疾患を見ると高齢者が多く、一部平均在院日数が長くなっている診断群もありますが、全国平均と遜色ないか、むしろ短い日数で退院出来ています。

※(-)ハイフン・・・10症例未満である場合
呼吸器科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
0400802499x0xx 肺炎等(市中肺炎かつ75歳以上)手術なし 手術・処置等2なし 85 21.33 16.40 11.76% 86.19
040081xx99x0xx 誤嚥性肺炎 手術なし 手術・処置等2なし 53 20.57 20.78 28.30% 86.23
0400802299x000 肺炎等(市中肺炎かつ15歳以上65歳未満)手術なし 手術・処置等2なし 定義副傷病なしA-DROP スコア0 24 8.63 8.13 4.17% 40.46
040200xx01x00x 気胸 肺切除手術・処置等2なし 定義副傷病なし 14 7.93 9.59 0.00% 31.14
040110xxxx00xx 間質性肺炎 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし 13 19.46 18.68 7.69% 79.00
  昨年度と比較し、入院患者数は増加しています。疾患の内訳として誤嚥性肺炎を含む肺炎が特に多く、高齢者の方が多くなっています。高齢の方の肺炎では嚥下訓練やリハビリテーションを要し訓練継続等の目的で転院を要することもあり、入院期間がやや長い傾向にあります。肺炎の他にも、気胸や間質性肺炎、慢性閉塞性肺疾患等の診療にも積極的に取り組んでおります。最近では。肺癌患者増加にも対応しています。当院は呼吸器内科と呼吸器外科の両科があり幅広い連携が出来ることも特徴です。近隣の医療機関と連携を図りつつ地域医療に貢献したいと考えております。
外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
080010xxxx0xxx 膿皮症 手術・処置等1なし 24 17.17 12.98 8.33% 82.29
080250xx9701xx 褥瘡潰瘍 手術あり 手術・処置等1なし 手術・処置等2あり - - - - -
080250xx99x0xx 褥瘡潰瘍 手術なし 手術・処置等2なし - - - - -
160660xxxx000x 皮下軟部損傷・挫滅損傷、開放創 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし 定義副傷病なし - - - - -
160660xxxx0100 皮下軟部損傷・挫滅損傷、開放創 手術・処置等なし 手術・処置等21あり - - - - -
 外科での入院症例で最も多いのは蜂窩織炎でした。平均年齢が約82.29歳と高齢で、認知症を伴った症例が多く、安静が保てないことと、食事採取やADLの改善に時間を要する例が多かったことが長期入院につながっているようです。蜂窩織炎に関しては、腫脹の軽減を早期に積極的に図り、前年度と比し在院日数が17.17日と若干短縮できています。
 褥瘡、それに伴う皮膚潰瘍、皮膚欠損創には、積極的に局所陰圧処置療法を行っており、約4週間の加療期間を要しています。高齢者でADLが低下した患者が大半で、治療に要する期間が長期の症例がほとんどです。創傷治癒過程に影響する栄養状態の改善にも時間を要しています。長期症例に関しては、周囲の病院との連携で転院していただき、継続加療を行っていただいています。

※(-)ハイフン・・・10症例未満である場合
整形外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
160800xx02xxxx 股関節・大腿近位の骨折 人工骨頭挿入術 肩、股等 225 25.84 25.29 62.67% 83.90
160690xx99xxxx 胸椎、腰椎以下骨折損傷(胸・腰髄損傷を含む。) 手術なし 57 16.82 19.16 71.93% 84.44
160720xx01xxxx 肩関節周囲の骨折・脱臼 骨折観血的手術 肩甲骨、上腕、大腿等 41 34.95 14.04 29.27% 75.59
160980xx99x0xx 骨盤損傷 手術なし 手術・処置等2なし 37 22.43 19.30 75.68% 73.51
160760xx01xxxx 前腕の骨折 骨折観血的手術 前腕、下腿、手舟状骨等 31 16.58 5.95 6.45% 72.61
 当院の整形外科では主に高齢者の骨折や外傷が多くなっています。
内訳で最も多いのが、①股関節周囲の骨折です。当院では受傷後なるべく早期に骨接合術を行っており、さらになるべく筋肉を切らない人工骨頭置換術(CPP法)や前方アプローチ(DAA)での人工股関節置換術も積極的に行っております。術後は翌日からリハビリテーションを開始し、患者さん自身のリハビリの進捗状況や合併症がないことなどを確認してからの退院や転院としていますが、平均在院日数は全国平均と同程度となっています。
 また、②胸椎、腰椎以下骨損傷、④骨盤損傷の方についても同様で患者さん自身のリハビリテーションの進捗状況などを確認してからのリハビリテーション専門病院への転院を主としていますので、④は平均在院日数は全国平均よりやや長くなっています。
 ③肩関節周辺の骨折、⑤前腕の骨折も高齢者に多い骨折ですが、多くの場合は自宅退院を目標として自宅に帰られるよう、手術後はしっかりとリハビリテーションを行いますので、平均在院日数は全国平均より長くなっています。
脳神経外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
160100xx99x00x 頭蓋・頭蓋内損傷 手術なし 手術・処置等2なし 定義副傷病なし 30 24.73 7.99 23.33% 81.43
010060xx99x20x 脳梗塞 手術なし 手術・処置等22あり 定義副傷病なし 29 28.07 16.94 27.59% 81.69
160100xx97x00x 頭蓋・頭蓋内損傷 その他の手術あり 手術・処置等2なし 定義副傷病なし 17 21.82 9.83 17.65% 79.82
010060xx99x40x 脳梗塞 手術なし 手術・処置等24あり 定義副傷病なし 14 30.50 16.89 42.86% 81.36
010040x099000x 非外傷性頭蓋内血腫(非外傷性硬膜下血腫以外)(JCS10未満)手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし 定義副傷病なし - - - - -
 頭部外傷で手術を必要とせず保存的利治療を行った患者さんの多くは高齢者の方であり、転倒や交通事故による頭部打撲が主たる原因でした。外傷による頭蓋内出血で手術を要した事例は、いずれも慢性硬膜下血腫によるものでした。
 非外傷性の頭蓋内出血としては、高血圧に起因する脳出血がほとんどでした。
 脳腫瘍で入院加療を行ったケースは、他院での手術あるいは放射線治療後であり、化学療法及びリハビリテーションを実施した患者さんでした。
 当院における脳神経外科の入院患者さんは、後期高齢者が多く、全身状態が悪化しやすく、総じてリハビリテーションにも期間を要することから、在院に数が全国平均に比して長くなりました。

※(-)ハイフン・・・10症例未満である場合
肛門科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
060235xx97xxxx 痔瘻 手術あり 93 5.58 5.55 0.00% 38.72
060241xx97xxxx 痔核 手術あり 71 7.75 5.38 0.00% 56.51
060230xx97xxxx 肛門周囲膿瘍 手術あり 36 5.83 8.20 0.00% 42.36
060220xx97xxxx 直腸脱、肛門脱 手術あり 16 11.06 8.93 6.25% 80.06
080010xxxx0xxx 膿皮症 手術・処置等1なし - - - - -
 当院における手術件数の最たるものは痔瘻根治術(複雑なもの)、次いで痔核手術、肛門周囲膿瘍切開術、直腸脱手術、痔瘻根治術(単純なもの)の順となっています。
最多の痔瘻根治術(複雑なもの)は殆ど他院からの紹介患者で再発、免疫抑制剤、抗癌剤内服といった難治症例や全身状態に問題のある症例が多いです。そのため当院では術式に工夫しており患者の全身状態に応じた手術を行っています。(括約筋損術、Seton術など)しかし、その殆どで行う術式は括約筋温存術(2段階離断法)ですが、良好な成績を修めており失禁などのQOLを損なうような合併症は皆無です。通常パスで行っており術後4日で退院としています。
 痔核手術(硬化療法を伴わないもの)は近年件数が増加しています。従来の切除(LE)は、疼痛、出血、機能低下といった合併症はある一定の確率で併発するため、当院では嵌頓痔核や裂肛が付随する痔核以外はACL(つり上げ固定術)を第一に選択としています。切除を行う場合でも、術後疼痛が少なくて済むように術式を工夫した切除を行っています。ACLは剥離操作のみで肛門上皮の切除はなく筋組織の損傷もないため、痛みもなく術後の再発は認めていません。ただ痔核の場合、日常の排便習慣が原因となっていることが殆どのためしばらく外来にて排便指導や薬剤によるコントロールを行います。
 痔瘻、痔核、膿瘍の転院率は0%です。

※(-)ハイフン・・・10症例未満である場合
神経内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
030400xx99xxxx 前庭機能障害 手術なし 10 4.70 4.67 0.00% 71.10
010220xxxxxxxx その他の変性疾患 - - - - -
010290xxxxxxxx 自律神経系の障害 - - - - -
161020xxxxx00x 体温異常 手術・処置等2なし 定義副傷病なし - - - - -
010060xx99x00x 脳梗塞 手術なし 手術・処置等2なし 定義副傷病なし - - - - -
 昨年度の入院患者は100%が救急搬送された患者さんでした。
 当院の近隣に耳鼻科疾患で入院出来る医療施設が少ないためか、耳鼻科疾患が最多となっております。
 当院では、入院にて神経内科の専門的な治療を必要とする患者さんが多くないため一般的な内科疾患の患者さんが多い傾向にあります。

※(-)ハイフン・・・10症例未満である場合
泌尿器科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
110310xx99xxxx 腎臓又は尿路の感染症 手術なし 40 17.65 13.66 12.50% 80.05
110080xx991xxx 前立腺の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等1あり 26 2.23 2.45 0.00% 75.50
110070xx03x0xx 膀胱腫瘍 膀胱悪性腫瘍手術 経尿道的手術 しゅじゅつ・なし 22 9.95 6.81 45.50% 80.45
11012xxx99xxxx 上部尿路疾患 手術なし 15 7.93 7.95 66.70% 67.13
11013xxx02xxxx 下部尿路疾患 尿道狭窄内視鏡手術等 - - - - -
 泌尿器科では、発熱性尿路感染症による入院患者が最も多く、入院期間は平均17日程度で全国平均よりやや長めです。これは高齢患者が多く、認知症などの合併症を有し、ADL(日常生活動作)が低下している方が多いためと考えます。前立腺悪性腫瘍については、診断目的で前立腺生検を行う症例が多く、通常は1泊2日での入院です。膀胱悪性腫瘍については、経尿道的膀胱悪性腫瘍切除術を行う症例が多く、入院期間はおよそ7日前後です。また、結石性腎盂腎炎では必要に応じて尿管ステント留置術を行います。尿管結石に対する体外衝撃波結石破砕術(ESWL)は、原則として外来で施行していますが、患者の状態や希望によっては入院で行うことも可能です。

※(-)ハイフン・・・10症例未満である場合
循環器内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
050130xx9900x0 心不全 手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし 他の病院・診療所の病棟からの転院以外 51 15.84 17.33 25.49 85.90
050050xx0200xx 狭心症、慢性虚血性心疾患 経皮的冠動脈形成術 手術・処置等1なし、1,2あり 手術・処置等2なし 43 3.47 4.18 0.00 72.12
050030xx03000x 急性心筋梗塞(続発性合併症を含む。)、再発性心筋梗塞 経皮的感動薬形成術 手術・処置等1なし、1あり 手術・処置等2なし 定義副傷病なし 35 10.03 11.37 0.00 72.66
150130xx9910xx 心不全 手術なし 手術・処置等11あり 手術処置等2なし 26 13.00 14.08 19.23 80.77
050050xx9920xx 狭心症、慢性虚血性心疾患 手術なし 手術・処置等12あり 手術・処置等2なし 23 2.04 3.27 0.00 73.96
 循環器疾患の入院の疾病としては、心不全がその最たるものですが、様々な原因による心臓の不調が原因で体がむくむ症候群です。当院では昨年同様入院患者の平均は85歳を超えております。適切な点滴や薬剤による医学的治療を行うとともに、早期にリハビリに加入していただき早期退院を目指しております。しかし、当院での加療のみでは足りず転院率も①④ともに20%程度と高い割合を示しております。一方で、在院日数は全国平均を下回っており、ひとえに退院支援看護師やソーシャルワーカーを介した地域の病院との連携にかかっているものと思われます。
 狭心症や心筋梗塞は、心臓を栄養する血管(冠動脈)の動脈硬化に基づく疾患群です。その治療は、心臓カテーテル検査による評価治療が必要です。当院では年々症例が増えており、本年は治療の症例が100件を超えるに至りました。また⑤の検査は、動脈硬化による冠動脈の狭窄を適切に評価している表れの指数です。入院当日に検査を行うことで、在院日数が全国平均より低いと考えられます。
腎臓内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
110310xx99xxxx 腎臓又は尿路の感染症 手術なし 19 15.89 133.66 15.79% 79.11
040081xx99x0xx 誤嚥性肺炎 手術なし 手術・処置等2なし 12 19.42 20.78 33.33% 81.50
110280xx9901xx 慢性腎炎症候群・慢性間質性腎炎・慢性腎不全 手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等21あり 12 16.75 13.75 16.67% 70.42
0400802499x0xx 肺炎等(市中肺炎かつ75歳以上)手術なし 手術・処置等2なし 10 19.50 16.40 0.00% 88.50
050130xx9900x0 心不全 手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし他の病院・診療所の病棟からの転院以外 10 15.80 17.33 30.00% 81.10
 当院では、慢性腎臓病の保存期の患者さんに対し血圧のコントロール、栄養指導、食事療法や薬物療法、糖尿病が合併する患者さんには加えて血糖のコントロールなど複数の側面から総合的に治療を行なっています。また、腎代替療法が必要となるステージG5の患者さんに対しては、血液透析、腹膜透析、腎移植といった治療法について丁寧にご説明し、患者さんとご家族のご希望を伺いながら、お身体への負担を考慮した最適な方法を選択しております。このように、患者さん中心の医療を実践し、安全で安心できる治療環境を整えることを重視しています。
 また、ご高齢の患者さんでは、尿路感染症による発熱や全身状態の悪化を伴うことも少なくなく、抗菌薬による治療を行ないます。治療の過程で筋力の低下が見られた際には自宅復帰に向けたリハビリも実施しており退院までの時間を要する場合もございます。
 腎炎やネフローゼが疑われる症例では、高度医療機関と密に連携を取り、検査や治療方針を慎重に検討しております。合併症や治療選択に伴う調整には十分な時間を要するため、平均在院日数は全国平均と比べて長くなる傾向がありますが、これは患者さんにとって最も安全で安心な医療を提供するために必要な過程であると考えております。
消化器内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
060380xxxxx0xx ウイルス性腸炎 手術・処置等2なし 39 7.54 5.55 2.56% 60.67
060102xx99xxxx 穿孔又は膿瘍を伴わない憩室性疾患 手術なし 37 8.81 7.60 0.00% 63.27
060140xx97x0xx 胃十二指腸潰瘍、胃憩室症、幽門狭窄(穿孔を伴わないもの)その他の手術あり 手術・処置等2なし 31 10.65 10.93 6.45% 71.00
060102xx02xxxx 穿孔又は膿瘍を伴わない憩室性疾患 小腸結腸内視鏡的止血術等 29 8.93 9.27 6.90% 75.55
060130xx9900xx 食道・胃、十二指腸、他の腸の炎症(その他良性疾患)手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし 22 14.14 7.67 0.00% 72.09
 急性胃腸炎は症状がひどい場合や経口摂取が出来ない場合に入院加療となります。
 高齢者の方も多いため回復に少し時間がかかることがあります。大腸の憩室炎はかなり悪化してから受診となることも多いため治療期間が長引きやすくなります。胃・十二指腸潰瘍の治療は標準化されていて入院治療期間に他の病院と比べ差はありません。大腸からの出血は内視鏡を用いて止血治療を行ないます。治療期間が長引くことはあまりありません。消化器疾患による色々な消化器症状がありますが、当院では消化器の機能が低下した高齢の方も多く回復に少し時間がかかる場合があります。
消化器外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
060160x001xxxx 鼠経ヘルニア(15歳以上)ヘルニア手術 鼠経ヘルニア等 62 5.42 4.54 1.61% 71.85
060340xx03x00x 胆管(肝内外)結石、胆管炎 限局性腹腔膿瘍手術等 手術・処置等2なし 定義副傷病なし 51 13.57 8.88 7.84% 76.27
060335xx0210xx 胆のう炎等 腹腔鏡下胆のう摘出術等 手術・処置等1あり 手術・処置等2なし 36 20.36 18.09 8.33% 74.56
060335xx0200xx 胆のう炎等 腹腔鏡下胆のう摘出術 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし 27 8.96 7.05 3.70% 72.56
060330xx02xxxx 胆のう疾患(胆のう結石など)腹腔鏡下胆のう摘出術等 23 6.52 5.99 0.00% 57.43
 直近1年間で入院治療を行った疾患で多かった疾患はヘルニアと胆道感染症(胆のう炎、胆管炎)です。ヘルニアと胆のう炎(胆石症)に対する手術治療は9割以上で腹腔鏡下手術(低侵襲手術)を行なっており、クリニカルパスという治療スケジュールを利用できた患者様は概ね予定期間内に退院できています。しかし、地域の特性上、高齢で併存疾患のある患者様は治療期間が長くなっております。胆管炎の原因の多くは胆管結石や腫瘍です。内視鏡的に胆管結石除去およびドレナージを行ないますが同様に高齢者が多く、また同じ入院期間で複数回の内視鏡処置が必要となることが多いため在院日数が長くなる傾向にあります。全ての疾患において短期入院と早期社会復帰が理想ですが、特に高齢患者さんにおいては様々な併存疾患を有される場合が多く、またリハビリ・介護の問題により長期入院を余儀なくされる方も多いために平均在院日数が全国平均よりも長くなる傾向にあります。
初発の5大癌のUICC病期分類別並びに再発患者数ファイルをダウンロード
初発 再発 病期分類
基準(※)
版数
Stage I Stage II Stage III Stage IV 不明
胃癌 13 - - 10 11 - 1 8版
大腸癌 - 12 26 30 - - 1 8版
乳癌 - - - - - - 1 8版
肺癌 - - - - - - 1 8版
肝癌 - - - - - - 1 8版
※ 1:UICC TNM分類,2:癌取扱い規約
 当院では5大癌(胃癌・大腸癌・乳癌・肺癌・肝癌)に標準治療体制を整備しています。当院集計では、胃癌は二次検診の導入がステージⅠの早期癌の発見に寄与しています。また大腸癌の多くはステージⅢ以上の進行癌であり、比較的容易にできる胃癌検診に比べると内視鏡検査の普及が遅れる傾向にあるのが一因と示唆されます。
 治療法は手術や化学療法が主ですが、専門医療チームによる詳細な検討により個々の症例に最適な治療法を選択しています。
 全国的にみても大腸癌の手術治療は他癌腫と比較し多く、当院でも大腸癌の手術症例数が最も多くなっております。肺癌も検診や他疾患治療時に偶発的に発見されるケースが増えておりステージⅠが増加し、積極的に胸腔鏡下手術を実施しています。一方で発見時にステージⅣと高度に進行している高齢者も多く、治療選択肢が少なくなります。肝臓癌に関しては手術可能な症例に対しては積極的に手術治療を行なっていますが、高齢者かつ進行した症例では薬剤治療やカテーテル治療も行ないます。
 治療に関しては、最新のエビデンスに基づいた方法を実施しています。また化学療法に関しては治療ガイドラインに準じた最新の標準治療を行なっており、医師、化学療法認定看護師、緩和ケア認定看護師、薬剤師とともに副作用対策も含めたチーム医療を実施しています。

※(-)ハイフン・・・10症例未満である場合
成人市中肺炎の重症度別患者数等ファイルをダウンロード
患者数 平均
在院日数
平均年齢
軽症 37 11.76 50.68
中等症 119 18.25 82.91
重症 16 27.50 84.06
超重症 - - -
不明 - - -
 市中肺炎の重症度の指標となっている「A-DROP」を使用して重症度を算出しており、0点が軽症、1~2点が中等症、3点が重症、4~5点が超重症に位置付けられます。入院患者の大部分は中等症以上で、中等症以上ではご高齢の方が多くなっています。嚥下訓練を含むリハビリテーションを要する方が多く入院期間がやや長くなっておりますが、周辺の療養型病院や施設との連携により、より早期の退院を目指す方針です。
脳梗塞の患者数等ファイルをダウンロード
発症日から 患者数 平均在院日数 平均年齢 転院率
3日以内 45 29.38 80.18 22.73%
その他 21 25.57 78.38 13.64%
 脳梗塞は、発症後4,5時間以内であれば血栓溶解剤(tPA)の投与を検討する必要があります。発症から6時間以内で脳の大きな動脈の閉塞であれば、カテーテル治療を検討する必要があります。このような超急性期治療の対象となる患者さんは、高次の医療機関へ転送しております。それ以外の患者さんは、当院に入院していただき薬剤投与とリハビリテーションを行います。そのような後者の入院が66名でした。
 状態が許せば、発症翌日より早期の積極的リハビリテーションを開始しております。継続したリハビリテーションを要する場合には、当院の地域包括ケア病棟に移動していただきリハビリテーションを継続します。片麻痺や失語症、嚥下困難など重度な脳障害がみられ、回復までに長い期間を要すると予測される場合には、近隣の回復期リハビリテーション病院を紹介し転院していただく方針としております。
診療科別主要手術別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)ファイルをダウンロード
呼吸器科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K5131 胸腔鏡下切除術 肺嚢胞手術(楔状部分切除によるもの) 14 3.07 3.86 0.00% 31.14
K509-4 気管支瘻孔閉鎖術 - - - - -
K386 気管切開術 - - - - -
K514-23 胸腔鏡下悪性腫瘍手術 肺葉切除又は1肺葉を超えるもの - - - - -
 症例数の最も多い胸腔鏡下肺切除(肺嚢胞手術)は気胸に対して行う手術であり、肺嚢胞が破れて胸腔内に空気が漏れて肺が縮んで胸痛、呼吸苦などの症状がみられます。この疾患に対し内視鏡を用いて破れた肺を完全に修復する手術で、当院ではクリニカルパス(注)(8日間)をすべての症例に使用して術後5日以内の退院を達成しており自宅復帰率は100%です。
 内視鏡手術は皮膚に1cmの切開を3ヶ所開けるだけで行いますので、術後の痛みも少なく創部も目立たないため美容面でも大きなメリットがあります。肺がん(悪性腫瘍)に対しても同様にクリニカルパス(12日間)と内視鏡切除を行い、こちらは術後11日以内での社会復帰が可能となっております。
※クリニカルパス・・・疾患別に入院中に行われる検査、治療などの医療行為や患者さんの療養に関するスケジュールを予め計画したもの

※(-)ハイフン・・・10症例未満である場合
整形外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K0461 骨折観血的手術 肩甲骨、上腕、大腿 168 2.48 25.29 54.17 82.29
K0811 人工骨頭挿入術 肩、股 99 2.47 21.45 62.63 83.85
K0462 骨折観血的手術 前腕、下腿、手舟状骨 51 4.16 21.43 11.76 66.86
K0463 骨折観血的手術 鎖骨、膝蓋骨、手(舟状骨を除く。)足、指(手、足) その他 31 2.94 24.00 6.45 65.87
K0483 骨内異物(挿入物を含む。)除去術 前腕、下腿 31 1.00 3.10 0.00 62.19
 当院では、大腿骨や上腕骨の骨接合術と人工骨頭置換術+人工股関節置換術が多数を占めます。その他、四肢骨折の件数も多く、高齢者の骨折治療が主となっています。特に人工骨頭は高齢者の筋力維持と高い脱臼抵抗性を獲得するために筋肉を極力残す方法(CPP法)で手術を行っており、さらに活動性の高い方には積極的に人工股関節置換術を前方アプローチ(DAA)にて手術支援機器(ROSA)を利用して行っております。
 元々、高齢者は持病を持っている方が多く、術前に全身状態が手術に耐えられるのかしっかり確認して手術を行っているため、術前検査とその治療に日数を要す場合があり、さらに術後も早期にリハビリテーションを開始しますが、患者さん自身ののリハビリの進捗具合や合併症が無いことを確認してからの退院や転院としていますので、平均在院日数は全国平均よりやや長くなっています。
 また上肢の骨折は自宅退院できる状態になるまで当院にてリハビリすることが多いため、転院率は低い傾向にあります。
脳神経外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
k164-2 慢性硬膜下血腫穿孔洗浄術 10 4.20 26.30 30.00% 85.10
 脳神経外科の手術はいずれも慢性硬膜下血腫の血種洗浄術でした。
 慢性硬膜下血腫は頭部打撲や抗血栓材服用中に発症することの多い疾患です。高齢者に多くみられます。歩行障害や認知症様の症状を呈することが多く、頭部CTやMRI等の画像診断の普及で、比較的早期に発見されることが多くなってまいりました。
肛門科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K7462 痔瘻根治手術 複雑なもの 112 1.00 3.98 0.00% 39.44
K7435 痔核手術(脱肛を含む。) 根治手術(硬化療法(四段階注射法によるもの)を伴うもの) 39 1.08 5.41 0.00% 57.38
K7434 痔核手術(脱肛を含む。) 根治手術(硬化療法(四段階注射法によるもの)を伴わないもの) 33 1.00 6.42 0.00% 58.58
K745 肛門周囲膿瘍切開術 20 0.65 3.85 10.00% 41.50
K7421ロ 直腸脱手術 経会陰によるもの 腸管切除を伴うもの 14 1.36 9.21 7.14% 80.00
 当院における手術件数が最たるものは痔瘻根治術(複雑なもの)、次いで痔核手術、肛門周囲膿瘍切開術、直腸脱手術の順となっています。
最多の痔瘻根治術(複雑なもの)は殆ど他院からの紹介患者で再発、免疫抑制剤、抗癌剤内服といった難治症例や全身状態に問題のある症例が多いです。そのため当院では術式に工夫しており患者の全身状態に応じた手術を行っています。その殆どで行う術式は括約筋温存術(2段階離断法)ですが、良好な成績(再発1%)を修めており失禁などのQOLを損なうような合併症は皆無です。通常パスで行っており術後4日で退院としています。
 痔核手術(硬化療法を伴わないもの)は近年件数が増加しています。従来の切除(LE)は、疼痛、出血、機能低下といった合併症はある一定の確率で併発するため、当院では嵌頓痔核や裂肛が付随する痔核以外はACL(つり上げ固定術)を第一に選択としています。切除を行う場合でも、術後疼痛が少なくて済むように術式を工夫した切除(LE変法)を行っています。ACLは剥離操作のみで肛門上皮の切除はなく筋組織の損傷もないため、痛みもなく術後の再発は認めていません。ただ痔核の場合、日常の排便習慣が原因となっていることが殆どのためしばらく外来にて排便指導や薬剤によるコントロールを行います。
 痔瘻、痔核の転院率は0%です。
 尚当院ではいずれの手術も、退院日を過ぎても療養を希望される場合、入院の延長は可能です。
放射線科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K6151 血管塞栓術(頭部、胸腔、腹腔内血管等)止血術 - - - - -
K6152 血管塞栓症(頭部、胸腔、腹腔内血管等)選択的動脈化学塞栓術 - - - - -
K6154 血管塞栓症(頭部、胸腔、腹腔内血管等)その他のもの - - - - -
 当科で行っている血管塞栓術とは鼠径部にある動脈から肝癌へ栄養を送る血管までカテーテルを挿入し抗癌剤、塞栓物質を用いて塞栓を行い癌への栄養の供給をストップする手術となっています。
 通常は肝機能が改善すると退院可能となりますが、術後の合併症により退院が延長されることがあります。また、年齢の若い方に比べ高齢者の方は退院まで多少時間がかかります。

※(-)ハイフン・・・10症例未満である場合
泌尿器科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K8036ロ 膀胱悪性腫瘍手術 経尿道的手術 その他のもの 23 1.78 7.13 4.35% 80.43
K841-7 経尿道的前立腺水蒸気治療 16 1.00 6.69 0.00% 77.00
K7981 膀胱結石、異物摘出術 経尿道的手術 - - - - -
K783-2 経尿道的尿管ステント留置術 - - - - -
K768 対外衝撃波腎・尿管結石破砕術(一連につき) - - - - -
 当科では、手術に関してはほぼ全例クリニカルパスを使用し入院期間の短縮に努めています。
 最も多い手術は膀胱癌に対する経尿道的膀胱腫瘍切除術ですが、合併症が多い患者様が多いため退院までに日数が長くなることがあります。
 前立腺肥大症に関しては、2024年から経尿道的水蒸気治療(Water Vapor Energy Therapy : WAVE治療)を導入し積極的に行っています。この手術法は非常に低侵襲で手術時間も10分前後と短く、抗血栓薬も原則中止すること無く行うことが可能なため、これまでも全身状態不良で手術が出来なかった患者様にも手術できる可能性が高く、また入院期間の短縮にもおおいに寄与していると思われます。
 尿路結石に対しては、体外衝撃波腎・尿管結石破砕術を基本的に外来で行っていますが、症例に応じて入院で行う事もあります。結石のサイズによっては経尿道的尿管結石除去術を行っています。経尿道的尿管ステント留置術は主に閉塞性腎盂腎炎、尿管狭窄に対し行っています。

※(-)ハイフン・・・10症例未満である場合
循環器内科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K5493 経皮的冠動脈ステント留置術 その他のもの 47 2.87 3.94 4.26% 75.45
K5491 経皮的冠動脈ステント留置術 急性心筋梗塞に対するもの 15 0.07 10.00 0.00% 70.87
K5492 経皮的冠動脈ステント留置術 不安定狭心症に対するもの 15 0.00 4.87 0.00% 70.33
K596 体外ペースメーキング術 11 0.09 10.27 9.09% 83.27
K5463 経皮的冠動脈形成術 その他のもの - - - - -
 当科での手術の経皮的冠動脈ステント留置あるいは形成術は、心臓を栄養する血管(冠動脈)の動脈硬化により冠動脈が狭窄(あるいは途絶)するために引き起こされる狭心症や心筋梗塞に対する治療法です。主に手首を局所麻酔し、動脈からカテーテルという細い管を冠動脈まで到達させ、冠動脈を撮影し、細い風船や金属の網目の管を用いて、狭窄や閉塞を解除する内科的手術です。平均年齢は70歳を超えており、年間100例程度の治療を行っております。
 体外ペースメーキング術は、脈を作り出す源の不調や脈を伝える電気心房の断絶で脈が遅くなることで心不全となる徐脈性不整脈に対する緊急の治療法で、頚部の太い静脈から体外電極を挿入し、心拍を増やす手術です。多くの症例で引き続き恒久的ペースメーカーを挿入する手術が必要となります。

※(-)ハイフン・・・10症例未満である場合
腎臓内科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K616-41 経皮的シャント拡張術・血栓除去術 初回 - - - - -
K6121イ 末梢動静脈瘻造設術 内シャント造設術 - - - - -
K635-4 腹腔鏡下連続携行式腹膜還流用カテーテル腹腔内留置術 - - - - -
 当科では、腎代替療法の導入を行なっており、血液透析選択された患者さんには、必要に応じて内シャント造設術や長期留置型カテーテル挿入術等を施行しております。内シャント造設術は、血液透析を安全かつ長期的に行なうために、自己の動脈と静脈をつなぎ合わせて血流の多い血管(シャント)を作製する手術です。これにより十分な血流が確保され透析が可能になります。
 一方、腹膜透析を導入される患者さんには、腹膜透析カテーテル挿入術を施行しております。これは腹腔内にカテーテルを留置し、透析液の出し入れを可能にするもので、在宅で透析治療を行なうために必須の手術です。
 シャント作製後は数日で退院となり、外来通院時に抜歯を行なっておりますが、ご高齢の患者さんや視力の悪い患者さんなど、自宅で創部処置が困難な場合は抜糸までの入院を継続していただくことがあります。その間に合併症の精査を行なうため、入院期間が長期化することがあります。抜糸までの目安は2週間です。
 また、維持血液透析中の患者さんに対してはバスキュラーアクセスの管理を行ない、定期的にシャントエコーで評価し、必要時にはカテーテルを用いた経皮的血管拡張術により狭窄を改善しています。
 なお、血管外科的な対応や特殊な処置が必要な場合には、高度医療機関と密に連携し、必要に応じて転院をご案内しております。

※(-)ハイフン・・・10症例未満である場合
消化器内科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K654 内視鏡的消化管止血術 36 1.11 7.89 11.11% 73.33
K722 小腸結腸内視鏡的止血術 36 0.72 7.67 5.56% 75.25
K7211 内視鏡的台帳ポリープ・粘膜切除術 直径2cm未満 25 3.84 5.16 4.00% 76.32
K6532 内視鏡的胃、十二指腸ポリープ・粘膜切除術 早期悪性腫瘍胃粘膜下層剥離術 14 1.00 6.14 0.00% 81.71
K688 内視鏡的胆道ステント留置術 14 0.50 7.86 21.43% 73.57
 吐血や下血などの消化管からの出血の原因は様々ですが、当院ではいつも緊急で内視鏡による止血治療を行なう体制をとっています。止血治療後、食事再開し再出血がなければ短期間での退院が可能です。大腸内視鏡検査で発見されたポリープはその場で形態によっては切除可能です。大きなポリープの場合は切除後の出血や穿孔などの合併症のリスクがあるため短期間の入院で経過をみるようにしています。早期の消化管の悪性腫瘍も内視鏡での切除治療を行なっています。切除後に止血が確認できた後食事を再開し再出血等が無ければ早期に退院となります。胆石などが胆管につまり肝機能障害や嘔気をきたすことがあります。状態によりますがまず内視鏡を用いて胆管の詰まりをとるためステントというチューブを用いることがあります。その後原因となっている胆石等を摘出します。状況によっては複数回の治療が必要となり入院期間が長くなることがあります。高齢者の場合は治療後すぐに自宅退院が出来ずしばらく療養やリハビリのため転院が必要になることもあります。
消化器外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
k672-2 腹腔鏡下胆のう摘出術 56 2.13 5.79 1.79% 66.88
K634 腹腔鏡下鼠経ヘルニア手術(両側) 54 1.22 3.13 1.85% 70.70
K688 内視鏡的胆道ステント留置術 54 1.85 14.31 12.96% 79.46
K681 胆のう外瘻増設術 26 1.31 18.62 11.54% 74.19
K718-21 腹腔鏡下虫垂切除術 虫垂周囲膿瘍を伴わないもの 19 0.89 6.11 5.26% 40.84
 消化器外科治療の中で最も多いものは胆嚢結石や急性胆管炎に対する腹腔鏡下胆嚢摘出術です。特に緊急性の高い急性胆のう炎症例に対しては迅速な診断と早期手術が可能な体制を整えており、良好な術後成績が得られています。
 次いで件数の多い手術が鼡径ヘルニアに対する腹腔鏡下鼡径ヘルニア手術です。腹腔鏡手術による精密な手術で再発率の低下と早期退院につながっています。
 3番目に多い手術は内視鏡的胆道ドレナージ術(内視鏡的胆のうステント留置術と内視鏡的経鼻胆管ドレナージを合計したもの)です。内視鏡的胆のうステント留置術は総胆管結石症、胆管悪性腫瘍や胆管炎に対する内視鏡治療です。高齢者に多い疾患であることや、疾患の性質上、複数回の治療が必要となることが多く、入院期間も他疾患に比べ長い傾向にあります。急性胆のう炎に対する経皮的胆嚢ドレナージ術も多く、合併症を有した高齢者の胆のう炎に対する一次治療として行なっています。
 虫垂炎に対する腹腔鏡か虫垂切除術も当院では標準術式として行なっております。低侵襲性で手術期間も短いため早期社会復帰が出来ております。
 以上、胆嚢摘出術、鼡径ヘルニア根治術、虫垂切除術に関してはクリニカルパスという定型化された治療スケジュールを導入しており、治療法の均一化を図ることで入院期間の短縮と治療の安全性を高めています。
 そのほかデータに示す以外に、胃癌、大腸癌、膵臓癌、胆管癌に対しても専門医による治療体制を整えています。
その他(DIC、敗血症、その他の真菌症および手術・術後の合併症の発生率)ファイルをダウンロード
DPC 傷病名 入院契機 症例数 発生率
130100 播種性血管内凝固症候群 同一 - -
異なる - -
180010 敗血症 同一 - -
異なる 10 0.27%
180035 その他の真菌感染症 同一 - -
異なる - -
180040 手術・処置等の合併症 同一 13 0.35%
異なる - -
 播種性血管内凝固症候群は、悪性腫瘍や感染症等、何らかの病気や外傷が先にあり、それがきっかけとなり体内のいたるところで血が固まって血栓ができ、同時に血が止まらなくなる病気です。昨年度は、入院時に細菌感染症で入院した患者さんと敗血症で入院された患者さんが、その後、当該疾患を合併した重症症例が2例ありました。
 敗血症とは、細菌感染によって全身炎症反応が起こり、これによって重要な臓器の障害が引き起こされる病態です。誤嚥性肺炎、急性胆管炎等の疾患が契機で入院してこられた患者さんのうち、重篤化し敗血症にいたるものや敗血症の患者さんが緊急入院し、そのまま敗血症の治療をするケースもあります。
手術・処置の合併症の症例は主に、感染等症状が顕在化した上での受診が多く、昨年度は、透析患者さんの透析治療中に起こりやすいシャント挿入部分の狭窄、シャント挿入部の感染がありました。また、他院にて四肢切断後の創部の離開によって治療を行った患者さんの治療も行っております。入院中に感染を起こしたのは3例でした。
臨床上、発生率を「0」にすることは非常に難しいですが、当院では、その発生を防ぐため厳重な対応をしています。

※(-)ハイフン・・・10症例未満である場合
リスクレベルが「中」以上の手術を施行した患者の肺血栓塞栓症の予防対策の実施率ファイルをダウンロード
肺血栓塞栓症発症のリスクレベルが
「中」以上の手術を施行した
退院患者数(分母)
分母のうち、肺血栓塞栓症の
予防対策が実施された患者数(分子)
リスクレベルが「中」以上の手術を
施行した患者の肺血栓塞栓症の
予防対策の実施率
492 226 45.93%
 「肺血栓塞栓症とは、術後の安静や長期臥床により血液のめぐりが悪くなることでできた血栓(血のかたまり)が、血液の流れに乗って肺の血管で詰まってしまい(塞栓)、突然の呼吸困難や胸痛などを来す危険な病気であり、発症予防が重要です。
我が国の肺血栓塞栓症が発症した場合の死亡率は14%と報告されており、死亡例の40%以上が発症1時間以内の突然死であるとされています。」(※)

 当院では「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン」(2017年改訂版)を遵守し、適切な管理を心掛けております。
術後の肺血栓塞栓症の原因である下肢深部静脈血栓症の危険因子として、①寝たきり状態、②手術時・手術後、③脱水、④高齢、⑤高度肥満、⑥喫煙、⑦妊娠、⑧心臓疾患・脳卒中・悪性腫瘍の既往、⑨先天的な血液凝固異常、⑩血栓症の既往などが挙げられます。
 肺血栓塞栓症の予防としては、早期歩行および積極的な運動、弾性ストッキング・弾性包帯、間歇的空気圧迫法、抗凝固剤療法があります。
 上記ガイドラインに従い、患者さん個人の危険因子(リスクレベル)に応じて検討し、選択・対応を行っております。
 令和5年度の当院での予防対策実施率は、45.93%と全病院での平均値(90.7%)より低い結果となり、今後も上記ガイドラインに基づき、更なる肺血栓塞栓症予防の徹底に努めて参ります。
※全国自治体病院協議会 資料より引用
血液培養2セット実施率ファイルをダウンロード
血液培養オーダー日数(分母) 血液培養オーダーが1日に
2件以上ある日数(分子)
血液培養2セット実施率
1,445 1,002 69.34%
 広域抗菌薬を使用する際、投与開始時に血液培養検査を行うことは望ましく、血液培養は偽陽性を防ぐために、2セット以上行うことが推奨されています。本指標は、血液培養を行う際に2セット以上の検査を実施された割合を示しています。2024年7月~10月の期間は、コロナ禍の影響で血液培養のボトルの供給制限があり、1セットのみで実施しました。その影響もあり、昨年度に比して減少して69.3%でした。現在は、2セットの実施をしており、直近では87.6%に回復しています。
広域スペクトル抗菌薬使用時の細菌培養実施率ファイルをダウンロード
広域スペクトルの抗菌薬が
処方された退院患者数(分母)
分母のうち、入院日以降抗菌薬処方日
までの間に細菌培養同定検査が
実施された患者数(分子)
広域スペクトル抗菌薬使用時の
細菌培養実施率
412 367 89.08%
 近年、多剤耐性菌やカルバペネム系抗菌薬に耐性のある細菌など、新たな耐性菌が出現し、世界的な問題となっています。抗菌薬投与前の適切な検体採取と培養検査が必要です。本指標は、適切な抗菌薬使用のための検査が実施された割合を示しています。
 当院は救急病院であり、高齢者重症感染救急患者の搬送が多く、血液を含めた培養2セットの採取を実施しています。広域スペクトル抗菌薬を投与後に、採取標本の中間報告を含め、結果にて速やかに狭域スペクトル抗菌薬に変更しています。
転倒・転落発生率ファイルをダウンロード
退院患者の在院日数の総和
もしくは入院患者延べ数(分母)
退院患者に発生した転倒・転落件数
(分子)
転倒・転落発生率
55,569 356 6.41%
 当院では、入院時、その後も定期的に転倒転落アセスメントを実施し、入院環境や療養環境で対策を日々実施しています。現代の超高齢化社会では、転倒転落を100%予防することは困難と考えています。また、高齢者は転棟を機に全身状態や病状の悪化につながってしまいます。
 これらに対応するため当院では、毎週ラウンドを実施し、患者に応じた環境整備、対策が実施されているか、医療安全管理者、看護師、理学療法士、薬剤師等と検討し、再発防止策につながるよう検討しています。
転倒転落によるインシデント影響度分類レベル3b以上の発生率ファイルをダウンロード
退院患者の在院日数の総和
もしくは入院患者延べ数(分母)
退院患者に発生したインシデント
影響度分類レベル3b以上の
転倒・転落の発生件数(分子)
転倒転落によるインシデント影響度
分類レベル3b以上の発生率
55,569 7 0.14%
 入院中の転倒転落アクシデントは患者のその後のQOLや治療に影響を与えてしまいます。
 また、影響度の高いアクシデント事例では、関係者で検討会を実施し、転倒転落対策を様々な視点で検討し、対策につなげています。
手術開始前1時間以内の予防的抗菌薬投与率ファイルをダウンロード
全身麻酔手術で、
予防的抗菌薬投与が実施された
手術件数(分母)
分母のうち、手術開始前
1時間以内に予防的抗菌薬が
投与開始された手術件数(分子)
手術開始前1時間以内の
予防的抗菌薬投与率
1,031 1,031 100.00%
 手術部位感染(SSI:Surgical Site Infection)とは、手術操作を直接加えた部位に発生する感染症を指し、手術創感染だけでなくより深部の筋膜、臓器、腹腔内感染も含まれます。発症すると、再手術・治癒による入院期間の延長や医療費の増大など、患者さんにとって大きく影響するため感染予防対策が重要視されています。
 SSI予防対策として手術執刀開始前60分以内の抗菌薬投与が推奨されています。
 当院は令和2年度の実施率80%以上から徐々に向上しており、令和6年度では100%となっています。SSI発生率を低下させることは重要な課題であり、今後も継続し安全な医療を目指して参ります。
d2(真皮までの損傷)以上の褥瘡発生率ファイルをダウンロード
退院患者の在院日数の総和もしくは
除外条件に該当する患者を除いた
入院患者延べ数(分母)
褥瘡(d2(真皮までの損傷)以上
の褥瘡)の発生患者数(分子)
d2(真皮までの損傷)以上の
褥瘡発生率
52,372 65 0.12%
 褥瘡は、患者のQOL低下に大きく影響を及ぼします。
 入院患者の半数以上が(日常生活自立度が低い)移乗等で介助を要する方で占めており、発生数は決して少なくないのが現状です。
 褥瘡発生のうち、浅い褥瘡(d2)80%、治癒率50%で、褥瘡発生・悪化しないよう褥瘡予防対策をチームで取り組んでおります。
65歳以上の患者の入院早期の栄養アセスメント実施割合ファイルをダウンロード
65歳以上の退院患者数
(分母)
分母のうち、入院後48時間以内に
栄養アセスメントが実施された
患者数(分子)
65歳以上の患者の入院早期の
栄養アセスメント実施割合
2,740 738 26.93%
 当期間の栄養アセスメント実施患者数は、26.93%と3割に満たない低い数値となっています。
 入院早期に栄養アセスメントを実施することにより、低栄養の評価や適切な介入ができ、入院期間の短縮や予後の改善に寄与できます。
 令和6年度の診療報酬改定後、栄養スクリーニング評価体制を整え、現在少しずつ早期に介入することで栄養アセスメントを実施できており、現在は9割以上の介入ができています。
身体的拘束の実施率ファイルをダウンロード
退院患者の在院日数の総和
(分母)
分母のうち、身体的拘束日数の総和
(分子)
身体的拘束の実施率
55,569 7,202 12.96%
 当院の令和6年6月~令和7年5月の身体拘束実施割合は12.9%です。これは、全国の一般病棟で報告されている平均値約6~13%と比較するとやや高い傾向にあります。当院では、高齢者の手術件数も多く安全確保を目的として身体拘束を開始する場合もありますが、抑制帯ではなくつなぎ服など使用し、患者の苦痛を最小限に抑えるように努めています。また、退院まで継続するのではなく、他職種と連携し、カンファレンスやラウンドを行い、患者の人権を尊重した「拘束時間短縮や早期解除」に取り組んでいます。今後も、代替え手段の検討や職員教育を重ね、身体拘束の最小化に向けて取り組んでまいります。
更新履歴
2025/10/01
病院情報を公開しました。 > 令和5年度の「病院指標」はこちらからご覧いただけます。