お知らせ
運動器カテーテル治療(TAME治療)について
― 異常な血管(モヤモヤ血管)が引き起こす関節痛
近年の研究で、長引く関節の痛みの原因の一つとして「異常な血管」が関与していることが明らかになっています。この異常な血管はいびつな構造をしており、モヤモヤと見えることからモヤモヤ血管と呼ばれています。
(肩関節のモヤモヤ血管)
モヤモヤ血管が引き起こす痛みには、主に以下の3つの原因があります。
- 痛み物質を血管外に漏らす
モヤモヤ血管はいびつな形状のため、痛みを引き起こす物質を血管外に漏らしてしまいます。 - 正常な血管から血液を奪う
モヤモヤ血管は周囲の正常な血管から血液を奪うことで、正常な血管への酸素供給が不足し、痛みを引き起こします。 - 異常な神経の増殖
モヤモヤ血管の周りに異常な神経が増えることで、痛みを感じる信号が強くなり、痛みが悪化します。
このようなモヤモヤ血管による痛みを改善するための方法として、「運動器カテーテル治療」が注目されています。この治療法は、モヤモヤ血管を効果的に治療する手段として、最近日本でも広まりつつあります。
― 運動器カテーテル治療とは?
運動器カテーテル治療は、モヤモヤ血管によって引き起こされる慢性的な関節痛を改善する方法で、具体的には「経カテーテル微細動脈塞栓術(TAME)」という術式を使用します。この治療では、細い管(カテーテル)を手首や足の付け根から体内に挿入し、モヤモヤ血管がある部位まで進めます。そして、そこで薬剤を投与し、異常部分を塞いでモヤモヤ血管を取り除くことで、痛みを軽減します。
下の画像は、肩関節周囲炎におけるモヤモヤ血管に対して運動器カテーテル治療を行った例です。モヤモヤ血管が目に見えて減少している様子が確認できます。
(スマートフォンでご覧の方は、画像を左右にスクロールしてください)
この治療により、次のような改善が期待できます。
- 痛み物質の漏れが止まる
モヤモヤ血管から痛みを引き起こす物質が漏れなくなり、痛みが軽減します。 - 正常な血管の血流改善
モヤモヤ血管による血液の不正常な流れが解消され、正常な血管の血流が回復することで酸素供給が改善し、痛みが軽減します。 - 神経の興奮が収まる
モヤモヤ血管周辺に増えていた神経の興奮が鎮まり、神経の数も減少することで、痛みが軽減します。
使用する薬剤(塞栓物質)は、安全性が高く、患者さんへのリスクを最小限に抑えられるよう配慮されています。また、全身麻酔を使わずわずかな傷で治療できるため、患者さんの負担が少ないことも特徴です。この治療法は従来の治療では改善が難しかった慢性の関節痛に対して、効果的な手段となっています。
― 対象疾患
- 肩、膝、肘、手首、腰、股関節、臀部、足などのあらゆる関節痛
- その他の神経痛(帯状疱疹後の神経痛など)
詳しい適応については、担当医にご相談ください。
注意事項
- 運動器カテーテル治療(TAME治療)は、現時点では日本国内で保険適用されていないため、治療費は全額自己負担となります。詳細は担当医にご確認ください。
- 使用される薬剤(イミペネム・シラスタチン)は、抗生物質として長年使用されてきましたが、TAME治療においては正式な承認を受けていないため「未承認医薬品」として扱われます。
※ アメリカでは、FDA(米国食品医薬品局)により先進医療として承認されています(承認日:2021年10月13日)
※ 現在のところ、重大な副作用の報告はありません
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● 当院は、救急指定病院・開放型病院・在宅療養支援病院であり、DPC(診断群分類包括評価制度)を導入しております。
● 敷地内全面禁煙です。